セラミック軸受球の強度信頼性に及ぼすリングクラック発生強度についての基礎理論の構築を目指し,球-球接触による静的および動的試験を行なう.リングクラックは潜在欠陥を起点とした破壊であり,リングクラック発生荷重が有効体積の影響を受けないことを明らかにする.さらに負荷速度依存性を論じるために応力拡大係数を考慮したリングクラック発生時間依存型の破壊モデルからリングクラック発生強度を推定する.
セラミックスやガラスに代表される脆性材料は耐熱性,耐摩耗性等の優れた性質を有している.その反面,脆性材料にはいくつかの問題点が指摘されている.特に本質的な問題である靭性の低さは,実用上,重大な欠点である.例えば,動翼・静翼にセラミックを用いたガスタービンにおいて,高速燃焼ガス中の微粒子が動翼・静翼に高速で衝突すると,金属のように塑性変形によって応力緩和できず,微小領域で損傷が生じる可能性がある.さらに,脆性材料は切欠き感受性が極めて高いため,微小域での損傷が致命的な破壊を引き起こす危険性がある.したがって微粒子衝突に対する脆性材料表面層の健全性・安全性の定量的な評価が必要とされている.
金属/セラミックス接合体は,両材料の利点を併せ持つ材料として幅広い分野で使用されている.しかし金属/セラミックス接合体は供用時において繰返し熱負荷を受けることが多く,その際に両材料の線膨脹係数の差によって構造体に熱応力が発生する.同熱応力は接合体の寿命を低下させる一要因となる.ゆえに接合体の長期使用の安全性を確保するためには,寿命を把握するとともに,その評価法を確立することが重要となる.
塑性加工において被加工材料に超音波振動を印加すると,加工に必要な力が低減する加工限界が向上するといった効果が得られる.これをBlaha効果という.この効果を塑性加工に利用しようとする試みは実用化が検討されてきたが,超音波を印加することで生じる効果は十分に解明されておらず,超音波の印加方法や装置の取り付け方法の理論的法則が確立されていないなどの理由から,一部の利用例を除いて未だ実用化に至っていないのが現状である.本研究では,Blaha効果の特性を理解し,そのメカニズムを解明することを目的とする.
超音波振動子からの振動付与は機械的であることから,ホーン先端部の変形,振動子の発熱,共振周波数の変動(インピーダンス変化)などの問題があるため,本研究を発展させるためには非接触条件下での振動付与を考える必要がある.そこで,レーザーピーニングに注目した.これは水中または水膜のある状態でパルス時間幅が数ns~数十nsのレーザーを材料の表面に照射することによって高圧のプラズマを発生させ,それに伴う衝撃力を利用してピーニング処理を行う技術である.ピーニング処理は材料表面に加工硬化をもたらす.本研究では,そこまで高いエネルギーを必要とせず,材料内に振動を付与する程度でよいため,高出力レーザーは不要である.設備的にも安価な加工システムとなる.
作成中
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KeV~GeVレベルのエネルギーをもつイオンを物質に照射することによって物質内に微細な損傷を作製し,それに付随する磁性の変化について研究しています.高エネルギーを有したイオンを固体に照射すると固体内の原子,分子と衝突を繰り返しながらエネルギーを失い,停止に至ります.私たちのグループでは固体内でのイオンと原子,分子の衝突過程とそれに付随する磁性の変化を研究しており,イオン照射と各種磁性体の磁気状態の変化について学理を形成することと,イオンの照射に伴う固体の損傷について測定を行う手法の開発を目材しています.
高圧下では原子間の距離が小さくなり常圧では予期できない反応が発生します.私たちの研究室では,欠陥を有する物質,あるいはエネルギー的に不安定な物質を高温・高圧状態に置くことで,新しい結晶構造,磁気構造をとる物質の形成を目指しております.また,原子間距離の変化は構造相転移,磁気相転移など各種相転移を引き起こします.新奇な相転移や二つ以上の磁性や構造の混成した状態を高圧下で作製し,その物性測定を行っています.
超塑性とは特定の温度で100%以上の伸びをくびれを伴わずに示す現象です.この現象は微細結晶粒を有する物質で発現されます.超塑性温度での塑性加工(超塑性加工)は難加工材の加工法として注目されています.また,超塑性材特有の微細組織と粒界すべりは活性な原子拡散を引き起こすため,興味深い拡散現象を引き起こします.私たちの研究室では超塑性圧縮加工と同時に,拡散現象を利用した固体拡散浸透処理によって表面浸炭,ホウ化処理を実施する技術の開発を実施しています.
磁性は多くの電子のスピンがおりなす多体現象であり,その秩序の発生,消失,ゆらぎは,さまざまな観点から興味深い現象です.私たちの研究室では磁性と体積の関係について基礎的な研究しています.遍歴電子系(電気が流れる物質)の磁性体は,巨視的なスピン秩序が消失した後も,スピンの集団励起による体積の変化が見られることが知られています.巨視的な秩序崩壊後に体積の温度変化に異常をしめす磁性体にとくに着目し,その基底状態との関連を研究しています.