現在,世界には様々な形のロボットが開発されている.開ループリンク機構は実現できる運動の多様性と高い操作性の点から産業用ロボットなどに用いられているが,高速化に伴い反作用力が大きくなるため,反作用力を利用した効率の良い駆動法の開発が望まれている.一方,動物の脚や腕などもリンク機構の一種と見なせるが,それらを用いた動物の歩行などには少ない入力で実現できる固有運動が利用されている.例えば,人間の動的2足歩行運動はリンク機構の固有運動である倒立振り子運動と振り子運動の組み合わせでモデル化できる.したがって,開ループリンク機構で構成されるロボットにおいても,その固有運動を用いることで効率の良い運動が実現できることが期待できる.
また,ロボットに正確な動きをさせるためには,制御法を検討する必要がある.その場合,制御するロボットをモデル化し,運動方程式を導出してシミュレーションを行い,適正な軌道を得るという方法が用いられている.体操選手などがする鉄棒運動は,リンク機構の固有運動である振り子運動である.その鉄棒運動のシミュレーションプログラムをロボットの制御法に用いれば,例えば人型ロボットなら逆上がりのできない子供のお手本としたり,運搬用の産業ロボットの制御に利用したりと,様々なリンク機構の制御に用いることが可能であると考えられる.
そこで本研究では,人間の鉄棒運動の軌跡を計算シミュレーションによって求めることを目的とする.
まず,人間の鉄棒運動の様子を動画解析し,解析結果から鉄棒運動の3リンク計算モデルを作成した.その後,3リンクモデルの運動方程式を導出し,直接数値積分法により解を求めるプログラムを開発した.また,開発したプログラムの妥当性は,3リンク振り子の実験機を製作し,実験機と実験機を模擬した計算プログラムのそれぞれを自由振動させ,2つの軌跡を比較することで確認をした.
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